ANMELDEN5.
第伍話 天使との交流
あれから数日。ジンギはモヤモヤしていた。
(昨日も夢を見た気がするんだが思い出せないな)
どうやら天使には夢の中でしか会えないらしいがジンギは夢を毎度すっかり忘れるタイプだった。
しかし、幻ではないのだとそれだけは認識していた、というよりせざるを得ない状況だった。なぜなら一度雀荘に入れば頭の上にその雀士のジョブとレベルが書いてあるのだから。
ちなみに、窓や鏡などにはその文字は映らないようだ。よって、自分のジョブやレベルは知る事が出来なかった。
(まあいいか、慣れてきたら気にならないな。つうかこの卓、コテツたちとは比較にならん程弱いな。戦士Level10 僧侶Level25 魔法使いLevel9って……。どうやって負けろってんだよこれ)
もちろんジンギは自分のレベルが15であると言われたことはもう覚えていない。
――数時間後。
普通に負けるジンギ。
(いや、なんでだよ! おかしいだろこれ!)
しかし、麻雀においてこれは少しもおかしな事ではなく、よくある事なのである。麻雀はどんなに優秀な打ち手でも今日覚えたばかりの素人に負ける可能性を持っているゲームだ。
正解を選べるということと勝てるということは決してイコールではない。まして、ジンギは15レベル。なにも不思議なことではなかった。
“わりいけど、一度抜けてメシにしていいか?”とマサルにメールを打つジンギ。
“OK”と返事が来る。
ジンギは一旦落ち着こうということで食事をしに出ることにしたのだ。こういう所は非常に冷静で、この冷静さはギャンブルで暮らす者なら必ず持ち合わせていないといけない才能の1つでもあった。
食事から戻ってくるとジンギはコテツと同卓になった。レベル97の男とである。しかし
(ふん! そうこなくっちゃ燃えねえよ! やっぱり勝負ってのはハイレベルな野郎を倒してこそだ!)ということを思うのがジンギなので、先ほどのメンツで勝てなかったのも相手が低レベルすぎてやる気や集中力がイマイチ出なかったというのも1つの原因であった。
事実、このコテツとの勝負でジンギは素晴らしい戦いを披露する。
とくにジンギの観察力と洞察力が光った局がこれだ。
ジンギ手牌
九九③④赤⑤23445(白白白)ドラ九
対面がリーチでその捨て牌は3巡目に5索切りをしている。すると対面がリーチ後に打4索。それを見た下家のコテツが手牌から2枚を右端に寄せる。その一連の動きをジンギは全て瞬時に理解した。そして……
「4ポン!」
打5索
ジンギ手牌
九九③④赤⑤23(444)(白白白)
それに対してコテツは迷いつつも結局1索を切ってしまう。
「ロン!」
河を見る前から発声するジンギ。もう確信していたのだ、4索を見て2枚寄せたという動作からその牌が1索だと言うことは。
一瞬クラっとくるコテツ。完全なるオリ打ち、しかもここまで上手にハメられたとなると顎先をアッパーされたかのような脳震盪が起こり立ち上がるのが困難になる。強者と強者の戦いとなるとそういう次元の麻雀をしている事はよくある。
「とにかく、このアッパーは脳に来た」と後にコテツは何度も酒の席で語るようになる。そんな強烈な一局であったという。
こうして、レベル97には勝つジンギ。全く無茶苦茶である。
その夜。
…なんか、あんまりにも役立ててなくてびっくりしてます。これ程とは…
うるせえな、おれはアマノジャクなんだよ! 思い通りにはならないぜ!
…まったくもう、面白い方ですね…
けっ! 天使の力なんていらねーんだよ! おれは自力で生きていくつもりだ。
…また、そうやって私を泣かせる…ひどいです…
ちっ、全く困った天使もいたもんだな。でも、あの機能、面白いぜ。役立ててはいないけど、見るのは楽しいな。
…そ、そうでしょう?
あー、だから泣くなよ。
…うふ、ごめんなさい。
────
──
ジリリリリリ!!
バガン!
強く叩きすぎである。乱暴に扱うのでジンギの目覚まし時計は秒針が取れてしまっている。というか、動いているだけたいしたものだ。
(なんかまた夢見た気がするな。よく覚えてねえけど…泣いてた…?)
「まあ、いいか。よし、今日もがんばっかー!」
夢でしか会えない天使との交流は毎回ほとんど忘れてしまうが、それでも少しずつジンギの記憶に残っていくのであった。
5.第伍話 天使との交流 あれから数日。ジンギはモヤモヤしていた。(昨日も夢を見た気がするんだが思い出せないな) どうやら天使には夢の中でしか会えないらしいがジンギは夢を毎度すっかり忘れるタイプだった。 しかし、幻ではないのだとそれだけは認識していた、というよりせざるを得ない状況だった。なぜなら一度雀荘に入れば頭の上にその雀士のジョブとレベルが書いてあるのだから。 ちなみに、窓や鏡などにはその文字は映らないようだ。よって、自分のジョブやレベルは知る事が出来なかった。 (まあいいか、慣れてきたら気にならないな。つうかこの卓、コテツたちとは比較にならん程弱いな。戦士Level10 僧侶Level25 魔法使いLevel9って……。どうやって負けろってんだよこれ) もちろんジンギは自分のレベルが15であると言われたことはもう覚えていない。 ――数時間後。 普通に負けるジンギ。(いや、なんでだよ! おかしいだろこれ!) しかし、麻雀においてこれは少しもおかしな事ではなく、よくある事なのである。麻雀はどんなに優秀な打ち手でも今日覚えたばかりの素人に負ける可能性を持っているゲームだ。 正解を選べるということと勝てるということは決してイコールではない。まして、ジンギは15レベル。なにも不思議なことではなかった。“わりいけど、一度抜けてメシにしていいか?”とマサルにメールを打つジンギ。“OK”と返事が来る。 ジンギは一旦落ち着こうということで食事をしに出ることにしたのだ。こういう所は非常に冷静で、この冷静
4.第四話 潜在能力の無駄遣い その夜、またジンギは夢を見た。…どうですか? 私が授けた能力は。面白いでしょう。RPG《ロールプレイングゲーム》みたいで。 どうもこうもねーよ。気になって勝負に支障が出るわ。…え アレ、じゃまだから消すこととか出来ねえのかよ。レベル97のヤツとかいて勝てるわけないって思っちゃうから困るんだよ。…97レベルですか。すごいのがいるんですね。神とか仙人の次元じゃないですか。 職業は(魔法使い)だったけどな。ていうか、オマエはなんなんだ?…私は、あなたの力です。 おれの力?…『天使』とか言われる時もありますね。だけど、私が思うに私自身はあなたの《潜在能力》だと思ってます。つまり、私はあなたの中に眠っていた能力。それが目覚めた。ということにしましょう。 寝てていいって。…なんでそんなこと言うんですかぁ。…泣きますよ。(面倒なやつだな)わかったよ。じゃあひとつ教えてくれよ。天使、おれのレベルはいくつなんだ。…どうせいま聞いても起きたら忘れるんでしょ。それに、まだ知らない方がいいかもしれませんよ。 いいから教えてくれ。…15です。職業は――「15だあ?! ざけんな!」&n
3.第三話 力量差を見極める(あなたの好きそうな仕様にしたとか言ってたなアイツ。RPGのことかよ。ていうかこれ本当に現実か? 幻覚見てないよな?)と不安になるジンギ。「しかし、先生は守護騎士か。ピッタリだな」「何のこと?」と西川晃(にしかわあきら)が言う。ジンギはアキラのその高い雀力と知識の多さに敬意を表して『先生』と呼んでいた。「いや、なんでもない」 そこへマネージャーの萬屋がやって来た。「おう、ギンジ。来てたのか、いつも協力ありがとうな」と言う萬屋勝の上にはバトルマスターLevel65とあった。(お! 上級職バトルマスターのレベル65だと?! やるなマサルめ……)「あー、ジンギさんー。いらっしゃいませー!」と挨拶しに南上虎徹(なんじょうこてつ)がレジ奥から寄ってきた。「よう、コテツ!」(こいつは何て書いてあるのかな) すると、コテツのジョブは意外にも基本職の(魔法使い)と出ていた。(なんだ、こいつあんなに強いのに基本職か)しかし……魔法使いLevel97「きゅっ、きゅうじゅうなな!?」「何を言ってるんださっきから?」とマサルが言うがそれどころではない。(レベル97とは経験値いくつで辿り着くんだ、もうあと2で上限じゃないか。この男、若いのにとんでもないレベル。よほど鍛錬していたのだろうな。あの力は才能だとばかり思っていたが…… 誰よりも努力の男だったか……) その日、この3人との麻雀をしたが、萎縮してしまってぼろ負けした。自分の職業やレベルはまだ知らないが、絶対この3人に勝ててる気がしないのだ。(知らない方が良くなかったか? 足枷になってる気がするが) まだ、ジンギはこの能力の使い道をわかっていなかった。これは勝てない相手と戦う事を避けるための能力。つまり、ギャンブルで生活していくためには最も重要な『力量差』を見極める能力なのである。だが、そんな素晴らしい力だということを理解してないジンギは「ちくしょー。変なもの見たから意識しちまって負けたじゃねえか! なんだあの力」と、文句を言いながら帰るのであった。
1. …天賦の才を持つ勝負師よ… 近いうち、あなたはかつてのライバルと邂逅するでしょう。あなたをよく知る旧友と… その時は彼を手伝ってみなさい。あなたにもそれは運命の扉を開く事になるでしょう。 …あなたに能力を授けます。◆◇◆◇牌神話第2部 麻雀烈士英雄伝一章 ジンギ!~北山銀次物語~その1第一話 天賦の才を持つ勝負師ジリリリリリリリ!!(うるせえ)ガン! 目覚まし時計を叩き割る勢いで止めて起きる。これはいつもの事だ。全くタフな時計だぜ。ゴクッゴクッゴクッ!「っはー!」 寝起きのよくないおれは枕元にいつも水のペットボトルを置いてから寝てる。寝起きに飲んで酸素を脳に送れば目が覚めやすいからだ。(今日は何時からだったっけ) カレンダーでシフトを確認する。(11時か。余裕だな。風呂入ってゆっくり支度して適当にメシ食ってから向かおう)──────「よしっ! 行くか」 おれは玄関に立ててある愛車(スケボー)を手に取って出勤する。これがおれの交通手段だ。 男の名は北山銀次。通称『ジンギ』と呼ばれる男。 これは、不思議な力を与えられたギャンブラーの物語。 物語の始まりは数年前まで遡る――────────────「これからどうすっかなー」 北山銀次(ジンギ)は素寒貧だった。ほんの数年前までは極道やら悪党やらを相手に詐欺をするという人生を賭けた大博打を打って2億円を勝ち取っていたのにだ。数字で書けば200000000円である。どうやって無くせばいいのかという程の金額だが、約2年で全額溶かしてしまうのがジンギであった。 (つうか、今朝変な夢見た気がするけど、どんな夢だったっけ。なんか力をくれてやるぞ。みたいな? そんなだったのは覚えてるんだけど) あてもなく歩いているとそこに雀荘を見つけた。(麻雀か、昔得意だったなー。友達としかやったことないけど…… そういや、旧友を手伝えって言われた気がするな! うん、なんとな~く思い出してきた) 何も考えずに(まあ、ヒマだし)で雀荘に入ってみたジンギ。少し麻雀するくらいの軍資金ならまだある。そんな生活を続けて数日、今日も知らない雀荘へと向かう。すると……「おおーーー! ギンジじゃないか久しぶり!」と店の人が懐かしそうにする。それは旧友のマサルだった。「あれ? ここマサル
2.第二話 読みづれえ その日以来、北山銀次は旧友の萬屋勝(よろずやまさる)の店を手伝うようにした。と言っても言われた時に来店して間を埋めるだけだが。給料は必要無かった。ゲーム代だけタダにしてもらえればあとは自力で勝てるからだ。 そうしているうちに人の上に文字が浮かび出る現象がまた現れる。(なんだ、あれ?) 気にしないようにしていた。自分が数年前まで脱法ドラッグをやっていた事による後遺症(幻覚症状)のような気がしていたから、そんなものは見えていない。そう言い聞かせていたのかもしれない。しかし、やっぱり見える。 その日、夢を見た。…なぜ、見ようとしないんですか。あれはあなたの能力ですよ。見ればいいんですよ、使って下さい。私が与えた力…ジリリリリリ!!(うるせえ!)ガン!(あー、今日は10時に来店してくれって言われてたっけなー。よし、起きっかー) 夢のことはまた覚えていない。 能力を持つ男、北山銀次。彼は自分のその授かった力を使うことを知らずに今日も真剣勝負をしに行くのだった。夢で見たことも覚えていないのだから仕方ない。 この、能力を持ちつつ使わない日々はなんと半年以上続いた。◆◇◆◇ その日はしっかりと夢を覚えていた。なんだかよく分からないが相手がイラついていたからかもしれない。…いい加減、上の文字読んでくださいよ。あなたの好きそうな仕様にしたんですから…私の力をお願いだから使ってよう…シクシクシクシク…どうせ今回も忘れるんでしょ。もう、嫌い。ばーか…「ンだとこの! ……夢か。なんだったんだアイツ。上の文字読め?」(あれは気のせいじゃなかったのか)「変な夢見たせいで早起きしちまったな……」(とりあえず忘れないようにメモしておくか。アイツ泣いてたしな) 口は悪いが女には優しいジンギは夢の中の女(?)にすら配慮した。もう泣かせたくないと思ったのだ。 風呂に入り、全身を洗う。鏡に写る自分の身体の入れ墨にニヤッと満足する。その胸元や腕にはKuokoa《クーオコア》と彫ってあった。ハワイ語で『自由』という意味である。 風呂を上がるとドライヤーで長い髪を乾かし後ろで一つに縛る。(よし、少し早いがもう行くか) 今日は雀荘でだけ人の上に見えるあの文字を読もうと思って決意して家を出た。 愛車に乗って雀荘へと向かう。ガッ、ガッガッガ
1. …天賦の才を持つ勝負師よ… 近いうち、あなたはかつてのライバルと邂逅するでしょう。あなたをよく知る旧友と… その時は彼を手伝ってみなさい。あなたにもそれは運命の扉を開く事になるでしょう。 …あなたに能力を授けます。◆◇◆◇伍章 ジンギ!~北山銀次物語~その1第一話 天賦の才を持つ勝負師ジリリリリリリリ!!(うるせえ)ガン! 目覚まし時計を叩き割る勢いで止めて起きる。これはいつもの事だ。全くタフな時計だぜ。ゴクッゴクッゴクッ!「っはー!」 寝起きのよくないおれは枕元にいつも水のペットボトルを置いてから寝てる。寝起きに飲んで酸素を脳に送れば目が覚めやすいからだ。(今日は何時からだったっけ) カレンダーでシフトを確認する。(11時か。余裕だな。風呂入ってゆっくり支度して適当にメシ食ってから向かおう)──────「よしっ! 行くか」 おれは玄関に立ててある愛車(スケボー)を手に取って出勤する。これがおれの交通手段だ。 男の名は北山銀次。通称『ジンギ』と呼ばれる男。 これは、不思議な力を与えられたギャンブラーの物語。 物語の始まりは数年前まで遡る――────────────「これからどうすっかなー」 北山銀次(ジンギ)は素寒貧だった。ほんの数年前までは極道やら悪党やらを相手に詐欺をするという人生を賭けた大博打を打って2億円を勝ち取っていたのにだ。数字で書けば200000000円である。どうやって無くせばいいのかという程の金額だが、約2年で全額溶かしてしまうのがジンギであった。 (つうか、今朝変な夢見た気がするけど、どんな夢だったっけ。なんか力をくれてやるぞ。みたいな? そんなだったのは覚えてるんだけど) あてもなく歩いているとそこに雀荘を見つけた。(麻雀か、昔得意だったなー。友達としかやったことないけど…… そういや、旧友を手伝えって言われた気がするな! うん、なんとな~く思い出してきた) 何も考えずに(まあ、ヒマだし)で雀荘に入ってみたジンギ。少し麻雀するくらいの軍資金ならまだある。そんな生活を続けて数日、今日も知らない雀荘へと向かう。すると……「おおーーー! ギンジじゃないか久しぶり!」と店の人が懐かしそうにする。それは旧友のマサルだった。「あれ? ここマサルの職場なのか。偶然だなぁ!」(旧